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入社後すぐに社員が休職したら⁈私傷病休職制度や傷病手当金を確認しよう!

現役上場企業人事/社会保険労務士のRYOTAです。

オリンピックも間近に迫る中、まだまだ世間ではコロナウィルスが収束する気配がなく、各企業・労働者ともに長期間に渡って忍耐を強いられている状況と存じます。そのような中で、多少なりともメンタル不調を訴えてくる社員の方も少なからずいるのではないでしょうか。
ひと昔前に比べると企業内でもメンタル不調を訴える人が増加しており、産業医も引く手あまたの状態が続いているようですね。

日本医療政策機構(HGPI)が出している「メンタルヘルス 2020 明日への提言」によれば、日本においては精神疾患を持つ患者数は増加傾向にあり 2017 年調査では約420万人もいるとのことです。
これは、いわゆる4大疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病)よりも多い状況であるとのことで、如何に世の中で精神疾患、メンタル不調が増えているかがよくわかりますね。

これはコロナウィルスのようなものだけではなく、社会不安、さらには経済状況の悪化に伴う雇用不安、家庭環境など、社会・経済的要因も大きいものだと思います。

そのような背景もあってか、最近では入社したばかりの社員が早々にメンタル不調を訴えてきて休職に入ってしまう、退職してしまうなどなど、ご相談が多く寄せられていますので、今回は「休職制度」や関連する「傷病手当金」について少し触れていきたいと思います。

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目次[非表示]

  1. 1.休職制度(私傷病休職制度)について
    1. 1.1.「私傷病休職制度」の一般的な概念について
    2. 1.2.休職制度運用時の注意点
  2. 2.傷病手当金(健康保険制度の一つ)について
    1. 2.1.傷病手当金の支給条件
      1. 2.1.1.(1)業務外の事由による病気やケガを療養するための休業
      2. 2.1.2.(2)仕事に就くことができない
      3. 2.1.3.(3)連続する3日間を含み4日以上仕事に就けない
      4. 2.1.4.(4)休業した期間について給与支払いがない
    2. 2.2.傷病手当金の支給期間
    3. 2.3.資格喪失(退職日)後の継続給付
  3. 3.復職するときの注意点
    1. 3.1.復職できない場合の対応
  4. 4.メンタル不調者が出ることを前提としたルールを早めに定めましょう

休職制度(私傷病休職制度)について

今の時代「私傷病休職制度」はどの企業にもあって当たり前のように思われているので、ごくまれに誤解をされている方がいらっしゃいますが・・・

この休職制度については「労働基準法」「労働契約法」「労働安全衛生法」「健康保険法」など、どの法令・条文を見ても明記されているものではありません。(=法的に定める制度ではないというものなのです。)
そのため「メンタル不調になったら、休職っていう制度が守ってくれる!」みたいな既得権益の発想を持たれている(持たせている?)としたら、大きな誤解になります。

あくまでも「会社が独自に設定できるルール」というもののため、制度を設けることも設けないことも会社の裁量となっています。

「私傷病休職制度」の一般的な概念について

「私傷病休職制度」は業務外の傷病等による長期間の欠勤が生じた場合に、療養に専念してもらうことを目的として一定期間労働者の労働義務を免除するという制度です。休職期間中に傷病から回復し就労可能となれば、休職が終了し復職となりますが、回復せずに期間満了となれば、退職(自然退職など)または解雇となります。

そもそも論になりますが、労働契約(雇用契約)において、労働者は労務提供をするという債務を負う(その見返りに給料をもらう)ため、業務外の傷病により労務提供が出来ないことは、債務不履行にあたり、契約の解除理由(民法541条、543条)となることが原則です。

とはいうものの、一般的に労働契約は長期的かつ継続的に存続する前提であるため、一時的に労務提供ができないとしても、すぐに解雇することなく、一定期間療養の機会を与えて解雇を猶予する。というものが本来の私傷病休職制度の主旨となっています。

何度も繰り返しますが、本来は労務提供ができない(勤務不可)ならば、退職/解雇となるものです。

申し上げるまでもないですが、私傷病休職は労働者本人の都合によるものですので、ノーワークノーペイの原則に則り賃金の支払いなどはしなくてよいこととなります。
なお、休職期間中においても在籍している事実には変わりないので、労働者はもとより企業も健康保険料の負担が発生することとなります。

休職制度運用時の注意点

実際に傷病等により休職を適用する場合には、就業規則に規定されている内容にもとづき運用をしていくこととなりますが、ここではよく忘れがちな論点や適切な運用をするための判断基準等についてチェック形式で記載をしておきます。
就業規則の内容については会社ごとの方針や考えがあるため、規定例などについては割愛させていただきます。

【休職制度のチェックポイント】
✓休職を適用する際の条件および理由などが明記されているか
✓勤続年数などにより休職期間は適切に設計されているか
✓試用期間中の者も対象範囲となっているか
✓休職に入る際の手続きや書面は準備されているか
✓休職期間中の社会保険料の取り扱いなどは確認できているか
✓休職中または復帰時のサポート体制(産業医連携など)は整備されているか
✓復職後に再発した場合の期間通算などは明記されているか
✓復職できない場合の流れは定めているか

なお、業務外の傷病により休職となった際には、ほとんどの場合「傷病手当金」についても受給できることとなりますので、併せてその内容や要件等についても触れていきたいと思います。

傷病手当金(健康保険制度の一つ)について

「傷病手当金」は健康保険制度の1つで、被保険者(本人)とその家族の生活を保障するために設けられた制度です。被保険者が業務外での病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されるもので、いわば不慮の事態によって働く事ができなくなった際、毎月支給を受けている給与の一部を補填してくれるものになります。
後述いたしますが、業務中での事故や通勤時の災害(労災)などには適用できないものです。ご注意ください。


傷病手当金の支給条件

(1)業務外の事由による病気やケガを療養するための休業

業務外(プライベート)での病気や怪我、メンタル不調などで療養する場合の休業が対象となります。
健康保険給付として受ける療養に限らず、自費で診療を受けた場合でも、仕事に就くことができないことについての証明があるときは支給対象となります。


その他の注意点は下記となります。 
✓自宅療養の期間についても支給対象
✓業務上災害、通勤災害によるものは支給対象外(=労災保険の給付対象となるので注意)
✓美容整形、脱毛、歯のホワイトニングなどは支給対象外

(2)仕事に就くことができない

就業可否については、療養担当者の意見等をもとに被保険者(本人)の仕事の内容を考慮して判断されます。

(3)連続する3日間を含み4日以上仕事に就けない

業務外の事由による病気やケガの療養のため仕事を休んだ日から連続して3日間(待期※)の後、4日目以降の仕事に就けなかった日に対して支給されます。

※待期には、有給休暇、土日・祝日等の公休日も含まれるため、給与支払の有無は関係ありません。就労時間中に業務外の事由で発生した病気やケガについて仕事に就くことができない状態となった場合には、その日を待期の初日として起算されます。

(4)休業した期間について給与支払いがない

業務外の事由による病気やケガで休業している期間について生活保障を行う制度のため、給与が支払われている間は、傷病手当金は支給されないこととなります。
ただし、給与の支払いがあっても、傷病手当金の額よりも少ない場合は、その差額が支給されます。


傷病手当金の支給期間

傷病手当金が支給される期間は、支給開始した日から最長1年6ヵ月となります。
これは1年6ヵ月分支給されるということではなく、1年6ヵ月の間に仕事に復帰した期間があり、その後再び同じ病気やケガにより仕事に就けなくなった場合でも、復帰期間(※)も1年6ヵ月に算入されます。支給開始後1年6ヵ月を超えた場合は、仕事に就くことができない場合であっても、傷病手当金は支給されません。※現在、国会にて「復帰期間は1年6ヵ月に通算されない」とする内容について法改正審議中のため、今後内容が変更となる可能性があります。


(例)標準報酬月額36万円(固定給与34万円+通勤手当2万円)の人が傷病手当金を受ける場合(支給開始日以前の12ヶ月間についての標準報酬月額は同額とする)
標準報酬月額36万円 ÷ 30日 × 2/3 = 8,000円(1日あたりの傷病手当金額)




なお、支給開始日以前の期間が12ヶ月に満たない場合は、次のいずれか低い額を使用します

  1. 支給開始日の属する月以前の直近の継続した各月の標準報酬月額の平均値
  2. 30万円(標準報酬月額の平均値※H31年4月以降の場合)

資格喪失(退職日)後の継続給付

資格喪失(退職)をした場合でも、下記条件を満たしていれば退職後も継続して傷病手当金を受給することができます。

  • 資格喪失日の前日(退職日等)まで被保険者期間が継続して1年以上ある
  • 被保険者資格喪失日の前日に、現に傷病手当金を受けている、または受けられる状態にある

なお、一旦仕事に就くことができる状態になった場合は、その後更に仕事に就くことができない状態になっても傷病手当金は支給されません。



復職するときの注意点

実際に傷病手当金を受給しながら一定期間休職した後、復職する場合の対応にも触れておきます。
休職後、原職復帰をさせる場合の対応としては、下記のようなイメージとなります。
(場合によっては、順番が前後することなどもあります)

  1. 復職の意思および健康状態等の確認(会社→本人)
  2. かかりつけ医師からの診断書提出(本人→会社)
  3. 会社産業医との面談(会社→本人) ※複数回の場合もあり
  4. 復職可否の協議(復職困難の場合は休職延長または退職)
  5. 一定期間の時短勤務(正常勤務が困難な場合は休職延長または退職)
  6. 正式に復職(再発の場合は再休職または退職)

特に運用面においては、本人の意思だけで安易に判断せず③および④が非常に重要となります。
あくまでも復職可否は会社側が適切に判断をするという認識のもと進めていただくのが賢明です。


復職できない場合の対応

無事に原職復帰ができる場合は良いのですが、一定期間休職に入ってしまうと、そのまま復職できないというケースも多々あります。
その場合は、復職できないから「解雇」とするのではなく「自然退職」という流れにしておくのが理想です。先述したとおり、労務提供不可であれば解雇/退職となりますが、解雇は労働者に与える影響などが大きいので「自然退職」となるように就業規則などで明記しておくことが望ましいです。

「自然退職」とは「一定事由が生じたことにより、労働者または使用者が意思表示をしなくても労働契約が終了すること」ですので、休職期間満了時に回復できない場合には最適な運用となります。

なお、傷病手当金の中で触れておりますが、勤続年数などの要件を満たしていれば、退職となった後も一定期間は傷病手当金を受給継続できる可能性はありますので、本人との話し合いで退職後の所得補償となることなどを適切に伝えることにより、不要なトラブルを起こすことなく円満に退職へつなげることができます。

メンタル不調者が出ることを前提としたルールを早めに定めましょう

休職制度は会社独自のルールではありますが、就業規則と実運用が合っていないケースや、適切に書面などでやり取りをしていないケース、口頭だけで終わっているケースなど後々トラブルになるようなやり方も多くみられます。またルールを定めておきながら、個々により特例措置を設けているなど公平性が保たれていない場合などもあります。

一定の労働者がいる会社では、メンタル不調者が出ることを前提としたルールを定めておき、都度判断がブレないよう適切な基準を設けて運用をすることが最も重要となります。

本来は会社側に裁量があるにもかかわらず、杜撰な運用により労働者と不要なトラブルを起こす原因の1つが休職制度ですので、これを機に社内運用を見直してみてはいかがでしょうか。

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RYOTA
RYOTA

現役の上場企業人事/社会保険労務士 企業内・外の視点を持ち合わせ、労務管理を常に会社目線で考え最適解を導き出し、労働法令を超攻撃的に使うことを得意とする。 「上場企業人事×社会保険労務士×IPO経験者×特例子会社代表取締役×リストラコンサルタント」という5つの顔を持ちながら、 株式会社Scrap&Buildの代表取締役も務め、執筆の他、企業顧問、研修講師、IPOコンサル、リストラなど最前線で活動中。


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