catch-img

貴社の管理職は名ばかりですか?それとも管理監督者ですか?

こんにちは、現役上場企業人事/社会保険労務士のRYOTAです。

突然ですが・・・
「アナタの会社には何人管理職がいらっしゃいますか?」
「そして、そのうち残業代支給の対象となっている方はどのくらいでしょうか?」

この2つの質問でピン!ときた方・・・
そうです、今回はいわゆる「名ばかり管理職」についてのお話です。

「管理職にしておけば、残業代払わなくなるから管理が楽でいいよねー!」
「いくらでも働かせられるし、会社にとっては本当にお得だよね!」

なんて考えてる人事の方、経営者の方・・・本当に大丈夫ですか?

「げ…!」と思った方や名ばかり管理職が実際にいる企業様も、ぜひご覧ください。

目次[非表示]

  1. 1.実態がない管理職=名ばかり管理職
  2. 2.3人の管理職の言い分をヒアリングしてみた
    1. 2.1.(1人目)名倉部長の言い分
    2. 2.2.(2人目)原田部長の言い分
    3. 2.3.(3人目)堀内部長の言い分
  3. 3.管理監督者の要件
    1. 3.1.各部長の意見について考察
    2. 3.2.管理監督者の範囲
  4. 4.管理監督者の運用は「基本給と固定残業代に分けて給与を設計する」のがベスト!

実態がない管理職=名ばかり管理職

「名ばかり管理職」 とは従業員に呼称上 「マネージャー」「店長」 などの肩書きを与え、労働基準法上で労働時間管理の規制外となる管理・監督者を装い、彼らを残業手当の支払い対象から除外するという企業の意図から生じる実態のない管理職のことを言います。

そして 「名ばかり管理職」 は単に人件費コスト削減圧力にとどまらず、日本企業の人事管理とも密接に関連しており、2000年以降に多くの企業で問題となりました。

最近はあまり大きな問題が無いと思っていた矢先ですが、つい先日とあるスーパーマーケットを経営する3代目社長の片岡さんから相談があり、現場で働く3名の部長たちから過去2年分についての未払賃金請求を受けたので、どうしたらいいか?とお話がありました。

詳細については、一度3名の部長たちにヒアリングをしてください!と依頼されましたので、ヒアリング形式で進めてみたいと思います。
(登場人物や役職等については全て仮名におきかえフィクションとなっております)

3人の管理職の言い分をヒアリングしてみた

3代目社長から紹介された3名の部長は、名倉・原田・堀内といい、全員同期の入社で2年前に各部門の部長になったそうです。
今回の話はどうやら裏で有田課長、上田係長、福田主任にそそのかされていたのもあるらしいですが、3名の言い分については下記のとおりです。

(1人目)名倉部長の言い分

自分は2年前から仕入担当の部長になりました。

給与は月額70万円の年俸制で、部下は数名おります。
人事考課の権限もあり、昇給や賞与についても基本的に私が決めております。

また朝はゆっくりと出勤ができるなど、そのあたりの裁量は幾らかあったと思います。

ただ、仕入れる商品の発注については、金額にかかわらず都度3代目社長の承諾を得ないとできない仕組みになっていたことや、社員やアルバイト採用をする際にも全て3代目社長の最終判断で採用可否が決まっており、職務上の権限については皆無で、現場への介入レベルがちょっと大きすぎるな・・・と思っていました。

3代目社長には、以前から女子アナやアイドルが参加する合コンにも呼んでいただき、そこで出会った「アイドルと結婚」できたことは、大変感謝はしているのですが、2年前からずっと長時間残業が続いており、毎日終電で帰っていたことを考えると、ここはきちんと残業代の請求をさせていただこうと考えたしだいです。

(2人目)原田部長の言い分

自分は2年前から、店舗開発担当の部長になりました。

給与は月額65万円の年俸制で、部下は10人程度おり、人事考課もしています。
新規店舗進出に伴う、土地の仕入れや店舗設計、備品発注などいろいろと裁量があり、この仕事に対しては非常にやりがいを感じております。

3代目社長がサウナ好きということもあり、サウナを舞台にしたTVドラマにもキャスト出演をさせていただくなど、業界関係者とコネクションがある社長には大変感謝しております。

ただ、1点…他の部長と比べても毎日出勤時間も他の社員と同様で残業の命令や夜の会議など、社長命令でずっと残るなど恒常的な長時間労働が続いておりました。
もう少し勤怠管理などは自由になるものだと思っていましたが、課長職の当時と何ら変わらない状態で、他の部長に比べても裁量権が全くないと思っています。

朝ゆっくり出勤したい、休みを多くとりたいとか、そういう気持ちではないのですが・・・
私自身「曲がったことが大嫌い」という性格なため、もう少し勤怠については、管理されずにある程度自由にさせてもらいたかったという感じですね。

(3人目)堀内部長の言い分

自分は2年前から、品質管理担当の部長になりました。

主に仕入れ商品や店舗の衛生面などを中心に商品の品質管理や消費者対応などを対応させてもらっております。スーパーマーケットもここ最近で60店舗くらいになったため、色々なお問い合わせをいただくこともあり、部下も30名を超えており、組織としても大きな部門で非常にやりがいがあります。

年間を通して忙しいのですが、朝・夜は自身の都合にあわせて出勤・帰社できており、趣味の「パラグライダー」もできているので毎日が楽しいです。

ただし、月額給与が45万円+賞与となっており、賞与は年間1ヶ月程度のため、実質600万円手前の年収になります。この前たまたま、税金に詳しい部下の徳井課長が「賞与を入れると年収が600万を超えるくらい」と話していたのを聞いてしまったのです。

同期の名倉部長や原田部長は年収800万円近くもらっていると言ってましたし、部門が異なるとはいえどうも同じ役職としては、差がありすぎるのではないかと思います。
また、管理職としてきちんと仕事をやっているつもりでしたが、労働時間も部下より多く、残業をつけている部下よりも結果的に年収が下回るのはどうも納得がいきませんので、今回お話をさせて頂きました。


上記のように3者3様の言い分があるようですので、改めて彼らの言い分と法律上の「管理監督者」の要件を照らし合わせてみたいと思います。

管理監督者の要件

「管理監督者」とは、労働基準法第41条2号にいう「管理もしくは監督の地位にある者」をさし、労働基準法が定める労働時間、休憩、休日の規定が適用されません。
また労働者の身分ではあるものの、労働条件の決定その他労務管理について、経営者と一体的な立場にある者でなければならないと解されています。

現状、ベタ書きで記載している法定要件は存在してはいないのですが、過去の判例等から判断基準については以下となります。
(参照:ゲートウェイ21事件 東京地裁 平成20.9.30判決 労判977号74頁)


【管理監督者の判断基準】
✓職務内容が少なくともある部門全体の統括的な立場にある
✓部下に対する労務管理上の決定権等につき、一定の裁量があり人事考課等に接している
✓自己の出退勤について自ら決定し得る権限を有している
✓管理職等の手当が支給され時間外手当が支給されないことを十分補填している

各部長の意見について考察

名倉、原田、堀内の部長3名の言い分を「管理監督者」の要件に即して考えた場合の考察は下記のとおりです。

  1. 重要な職務内容、責任および権限がある
    →名倉部長の言い分から、部門責任者でありながらも業務の比重を多く占める商品の発注や部下やアルバイトの採用など裁量権も実質無いということから、企業経営に関する重要な権限や責任を有しているとは言い難い
  2. 勤務態様の裁量性がある
    →原田部長の言い分から、勤怠管理も裁量がなく、残業など恒常的に命令をされており、課長職の時と何ら変わりがない状況であったことから、管理監督者としての勤務形態とは言い難い
  3. 給与につき、その地位にふさわしい処遇がある
    →堀内部長の言い分から、同役職の部長と比較してもかなり年収に違いがあり、また一般労働者との賃金逆転が起こっていることなどから、管理監督者として給与などが優遇されているとは言い難い

上記から、一見すると「管理監督者」にも該当しうる条件はありますが、厳密に各要件と照らし合わせた場合は、労働基準法が求める「管理監督者」の条件を全て具備しているとは言い難い側面があります。

もちろん、彼らの言い分のみですべてを判断されるものではないですが、どの企業にもあり得るような内容ではないでしょうか。

管理監督者の範囲

過去にも大手ファーストフードチェーン店や有名スポーツクラブなどで「管理監督者」についての裁判や未払賃金請求がありましたが、どちらも労務管理上の実態を見る限りは「管理監督者」とは言い難いとその適正性を否認され、未払賃金や慰謝料などの支払いが発生しています。

金額の多寡はさておき、世の中一般で言われている「管理職=管理監督者」ではないことがより強くなった事案の1つと言えるでしょう。多少のブレはあるにせよ、世の中の管理職の半分以上は実態から「管理監督者」には当たらないと考えられます。

先述したように「管理監督者」は労働時間、休日、休憩の適用が除外されるため、企業側としてはなるべくその枠として勤務してもらい、時間外勤務手当や休日出勤手当の支払いがないようにしたい思惑はあるものの、現実的な面では非常に厳しい見解が出されている事実があります。

管理監督者の運用は「基本給と固定残業代に分けて給与を設計する」のがベスト!

大企業はもとより、中小企業についても管理監督者性を否定される可能性は高いと考えられます。
一説によれば「本気で労働者が戦ったら、日本の管理職の80%は管理監督者性を否認される」というお話もあるくらいです。

職務権限や組織構成など諸々考慮したうえで、少しでも不安や疑義がある場合には「管理監督者」として運用をせずに、同じ金額を支給するにせよ、基本給と固定残業代に分けて給与を設計するなどしておけば、リスクは十分に回避できると思われます。

対外的には「本部長」「部長」という呼称で仕事をしていても、給与額の内訳まで開示することはありませんので、組織上はそのような名称を使っていても、給与体系は固定残業代を取り入れている。ということは何ら法的に問題ありません。

ただ、未払賃金請求の時効期間も2年間から3年間に見直しをされており、万が一の時には結構な損失となる可能性があります。その点は注意が必要です。

法律や裁判官は「形式ではなく実態にあわせて判断」してくるものであり、「管理監督者」とは、先述した諸要件を充足した場合に適用され、役職名や呼称により判断するものではありませんので運用する際には十分ご注意ください。

RYOTA
RYOTA

現役の上場企業人事/社会保険労務士 企業内・外の視点を持ち合わせ、労務管理を常に会社目線で考え最適解を導き出し、労働法令を超攻撃的に使うことを得意とする。 「上場企業人事×社会保険労務士×IPO経験者×特例子会社代表取締役×リストラコンサルタント」という5つの顔を持ちながら、 株式会社Scrap&Buildの代表取締役も務め、執筆の他、企業顧問、研修講師、IPOコンサル、リストラなど最前線で活動中。


Seminar
おすすめセミナー


Ranking 人気投稿


Keyword キーワード


Tweet 中の人のつぶやき