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有給休暇(年次有給休暇)の取得について正しく運用できていますか?

現役上場企業人事/社会保険労務士のRYOTAです。

4月に入社された新卒の方も半年が経過する頃となり、そろそろ社内でも「有給休暇」のお話などが出ている時期ではないでしょうか。

一方で、入社早々に「有給休暇」を付与している会社もありますので、既に取得しているなどという方もいらっしゃるかもしれません。

この「有給休暇」について、呼び方は人それぞれで「年次有給休暇」「有給」など多岐に渡りますが、ここでは「有給休暇」」として話を進めていきたいと思います。

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目次[非表示]

  1. 1.意外と知られていない!有給休暇(年次有給休暇)の豆知識
    1. 1.1.日本の有給休暇の消化率は少ないのか?
  2. 2.よく間違えやすい!有給休暇の基準日
    1. 2.1.有給休暇の分割付与する場合の注意点
      1. 2.1.1.◆分割できる有給休暇
      2. 2.1.2.◆法定基準日以前に付与する場合の要件
      3. 2.1.3.◆基準日の変更は不可能
  3. 3.有給休暇の時効(権利消滅)について
    1. 3.1.有給休暇の取得順序には規定がない
    2. 3.2.取得順序についての根拠は民法にあり
    3. 3.3.取得順序についての規定例
  4. 4.さいごに:有給休暇を正しく、公平に使用できるよう見直しを!


意外と知られていない!有給休暇(年次有給休暇)の豆知識

会社で働いたことがある人には馴染みが深く、労働基準法にも規定されている「有給休暇」ですが「義務を果たさずに権利ばかりを主張する人が多い!」など経営者の呟きネタでだいたい上位にくるものですね。

そのネタとされる有給休暇もひと昔前では、詳細について専門家や人事の方くらいしか知らなかったのですが、今の時代ネット検索すれば「入社後6ヶ月で取れる」「アルバイトでも権利がある」など次々と情報が取れるようになっています。

2019年4月に法改正があり有給休暇の取得義務化(年5日以上)も既に運用され、これまでは労働者の「権利」というだけでしたが、今では「義務」の要素も入ったため、現場での認識も労使双方でかなり浸透してきているのではないでしょうか。

そのような中、今回は有給休暇の中でも、運用時に間違いやすい「有給休暇の基準日」や、意外と知られていない「有給休暇の取得順序」について解説していきたいと思います。


日本の有給休暇の消化率は少ないのか?

有給休暇の細かい解説を始める前に、最近の時事ネタにも少し触れておきたいと思います。

そもそも日本は諸外国と比べてなんとなく休んでいない(休めていない)印象をお持ちじゃないでしょうか。

確かにお国柄ロングバカンスのようなものは取りにくいという傾向は否めないですが、数年前の調査結果をみると、日本は祝日・有給休暇をあわせるとかなりの上位に入るのはご存知ですか?

特に、祝祭日のランキングでは欧米諸国を抑え、なんと1位!という結果です。(下図1参照)
有給休暇の消化率は50%程度のため、少し劣りはしますが、トータルで見るとトップ10に入っているようです。(下図2および3参照)

引用:祝祭日数世界1位!日本人は休みすぎ!?
https://president.jp/articles/-/21927

国全体のお話なので業界や職種によって、もちろんブレはありますが、やはりファクトベースで考えることは大事ですね。


よく間違えやすい!有給休暇の基準日

少し前置きが長くなりましたが、ここからは実際の運用で間違えやすい「有給休暇の基準日」について触れていきたいと思います。

既にご存知の方も多いと思いますが、労働基準法(第39条1項)では下記のように定められています。

「使用者(=会社)は、その雇い入れの日から起算して6ヶ月継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない」

これが世間一般で認識されている「入社後6ヶ月経過したら有給休暇が使える」という根拠になります。


法定どおりの運用をされている会社では、上記に基づいて4月1日に入社した場合、その半年後の10月1日に10日間の有給休暇を付与することとなります。その後、10月1日を基準日(付与日)として、毎年有給休暇を付与する運用となります。(下図(1)参照)


有給休暇の分割付与する場合の注意点

上記の法定どおりの運用とは異なり、先に述べた条文から「分割した10労働日の有給休暇を付与」するケースの基準日を見ていきます。

具体的には、入社日当日に一部の有給休暇を分割(前倒し)して付与するケースなどが想定されますが、有給休暇を分割する場合の運用には下記の注意点があります。


◆分割できる有給休暇

分割できる有給休暇は、初年度において付与されるものに限ります

また入社後、最初に付与される10日分について、前倒しして付与する場合にのみ分割して付与することができますが、次年度以降については分割して付与はできません。


◆法定基準日以前に付与する場合の要件

法定基準日以前に分割して有給休暇を付与する場合の取り扱いについて、通達では「法定基準日以前に付与する場合の有給休暇の付与要件である8割出勤の算定は短縮された期間は全期間出勤したものとみなすもの」とされていますので、入社した4月1日に5日付与した後、9月末日までの出勤率が8割未満だったとしても既に付与している「5日」について取り消すことはできないこととなります。

法定基準日以前に一部付与したとしても、残日数については法定の基準日(入社後6ヶ月を経過した日:ここでは10月1日)までに付与しなければならないこととなります。(下図(2)分割 参照)

また、4月1日の入社日当日に有給休暇10日を一括して前倒し付与する場合においても、上記と同様の考え方に基づき運用することとなります。(下図(3)一括前倒し 参照)



◆基準日の変更は不可能

上記のように有給休暇を分割(前倒し)して付与する場合、最初に付与した日(上記の場合4月1日)が基準日(付与日)となるため、翌年以降の基準日は、4月1日となります。

この基準日変更の考え方については、通達で「次年度以降の年次有給休暇の付与日についても、初年度の付与日を法定基準日から繰上げた期間と同じまたはそれ以上の期間、法定基準日より繰り上げること」とされていることが根拠となります。

翌年以降は、法定どおりの運用をした場合の基準日(10月1日)に変更するなどは認められませんので、会社として分割付与をする場合には、その後の管理方法にも注意が必要となります。

前倒しで付与しておきながら、基準日の認識が誤っていた。などのお話もありますので、再度社内の運用方法などを確認しておくとよいでしょう。



有給休暇の時効(権利消滅)について

有給休暇の基準日に触れてきましたので、せっかくですので有給休暇の時効(権利消滅)についても触れておきます。

法定通りに考えると、入社して6ヶ月経過後「10日」付与され、そこから1年後(=入社後1年6ヶ月後)「11日」が付与されます。それぞれの有給休暇は付与から2年間取得できる権利があり、複数回付与がある場合は、古いものと新しいものが重複(混在)する期間が生じます。(下図参照)

図表でみると、勤続2年の人の場合「初回の10日分」と「2回目の11日分」が混在している状態になりますが、この場合どちらの有給休暇から取得(消化)されるのでしょうか。

この有給休暇の取得順序は、労働基準法では規定されておらず、意外と知られていないものになりますので、続けて解説をしていきたいと思います。


有給休暇の取得順序には規定がない

有給休暇の取得順序について「普通に古いものから自動的に消化されるんじゃないの?」と思われる方も多いと思いますが、必ずしもそういうものではありません。

ここまで色々と決めておいて、なぜかこの取得順序は規定がないという事態になっています。

「労働基準法の隙間」とでも言うべきでしょうか・・・。


世間一般ではなんとなく「普通に考えれば、労働者に不利にならないよう古いものから取得するものでしょ!?」みたいな空気があるのですが、規定がないってことは、会社が決めちゃってもいいんですよ。

なぜなら、就業規則というのは、法律の範囲内で会社が定めるものですからね!

(労働者10人以上の会社は就業規則作成がマストとなりますのでご注意ください)


私がコンサルティングをする時、必ず就業規則作成時には「有給休暇繰越分の扱いはどうされますか?」と役員や人事の方に確認をさせていただきます。

「新しい方から取得(消化)にしておきますか?」というと・・・

「そこまで厳しくしちゃっていいの!?」など言われることも多々ありますが、あくまでも順序を決めるのは会社となります。

最終的には、会社の意向に沿って決めることとなりますが「そんなこと言われないから知らなかった」「それ、早く言ってよ」などと後々クレームにならないよう必ず補足するようにしております。


取得順序についての根拠は民法にあり

この取得順序について労働基準法では、その規定がないと記載しておりますが、その根拠となっているものは他の法律(民法)にありますので、少し解説をさせていただきます。

【民法488条(同種の給付を目的とする数個の債務がある場合の充当)】

債務者(=会社)が同一の債権者(=労働者)に対して同種の給付を目的とする数個の債務(有給休暇付与)を負担する場合において、弁済として提供した給付が全ての債務を消滅させるのに足りないときは、弁済をする者は、給付の時にその弁済を充当すべき債務を指定することができる。

ちょっとお堅い言葉が並ぶので、より分かりやすいように要約すると下記のようなものとなります。

付与した有給休暇の一部を労働者が取得する場合「繰越されたもの」(古いもの)と「新たに付与したもの」(当年度のもの)のどちらを優先して使用するかは、会社が定めることができる。

上記より、就業規則などに明文化しておけば、取得順序は会社が決めても良いということになります。


取得順序についての規定例

当年度に発生した年次有給休暇から取得をしていくという取り扱いをするためには、就業規則に下記のような一文を規定することが必要です。


【規定例】

年次有給休暇の消化については、当年度に発生したものから順次消化していくものとする。

なお、既に過年度分に発生したものから順次消化する運用となっている場合は、急に変更をすると現場の混乱や、いわゆる不利益変更などにもつながりかねないため、きちんと事前協議等を経たうえで、然るべきタイミングから切り替えていただくことをお勧めいたします。


さいごに:有給休暇を正しく、公平に使用できるよう見直しを!

有給休暇の取得義務化なども既に運用されている今だからこそ、改めて運用にあたっては正しい知識を持っておく必要があると思います。

有給休暇は法律上「労働者の権利」となっている事は紛れもない事実ですが、会社(使用者)側から見れば「労務提供が無い日に賃金が発生するもの」となっていることも事実です。

会社側については、法令遵守はもとより、労使双方でトラブルが無いよう適切な運用や社内理解を進めておくことが肝要となりますし、労働者側についても「権利」を主張しすぎて業務に支障をきたすような取得にならないよう注意をする必要はあります。

労使双方で日々のコミュニケーションを適切に取り、業務管理を進めることが有給休暇というものを正しく、公平に使用することへの第一歩になると思いますので、これを機に有給休暇の管理方法などを見直してみてはいかがでしょうか。

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RYOTA
RYOTA

現役の上場企業人事/社会保険労務士 企業内・外の視点を持ち合わせ、労務管理を常に会社目線で考え最適解を導き出し、労働法令を超攻撃的に使うことを得意とする。 「上場企業人事×社会保険労務士×IPO経験者×特例子会社代表取締役×リストラコンサルタント」という5つの顔を持ちながら、 株式会社Scrap&Buildの代表取締役も務め、執筆の他、企業顧問、研修講師、IPOコンサル、リストラなど最前線で活動中。


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