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副業禁止・制限・中止はできるのか?!社労士監修の副業運用マニュアル

こんにちは、現役上場企業人事/社会保険労務士のRYOTAです。

近年、経済環境の急速な変化やコロナ状況等を踏まえ、製造業や航空業界などを中心に減産・減便時に限って従業員の「副業」を認めるケースが増加しています。
その他、大手製薬会社では「週3日休み」を導入して副業や資格取得を促進するなどの動きも出てきており、働き方の見直しが各企業において加速しているのではないでしょうか。

企業規模や業界によって動き方が異なるケースもありますが、今後こうした流れは働き方改革の一環としても多く取り入れられていく傾向であることは間違いなさそうです。

ただし、「副業」はあくまでもサブという位置づけですので、本業をおろそかになんでも許容されるものでもない一面があります。

そのため今回は「副業」の特徴や社会における位置づけ、その他運用にあたっての注意点や管理方法など現実的な部分に触れていきたいと思います。

なお、呼称については「副業」「兼業」「複業」など様々ですが、ここではこれらを総括して「副業」という形で進めさせていただきます。

目次[非表示]

  1. 1.副業の現状
  2. 2.副業の位置付け
  3. 3.副業可否の考え方(過去の判例事案まとめ)
  4. 4.副業の運用方法について
  5. 5.副業を許可するのも、柔軟な考え方の一つ


副業の現状


労務管理上のお話を進める前に、世の中における「副業」の在り方について、最新のデータをもとに「企業」「個人」の双方から確認しておきたいと思います。

まず、実際に企業が「副業」をどの程度容認しているのかを見ていきたいと思いますが「副業に関する調査結果(企業編)パーソル総合研究所調査 2021」によれば、自社の正社員が「副業」を行うことを容認している企業の割合(全面容認と条件付き容認の合計)は約55%となっております。

時代とともに容認する割合が高まっていることは事実ですが、まだ半数程度(約45%)は禁止というスタンスをとっているようです。禁止にしている主な理由としては「自社の業務に専念してもらいたい」「(副業の)疲労による業務効率の低下への懸念」「情報漏洩リスク」などがあげられています。

これは主たる雇用関係を結んでいる企業側からすれば、本業に専念すべきというスタンスであるため、妥当な見解とも言えるでしょう。


その一方で「副業に関する調査結果(個人編)パーソル総合研究所調査 2021」によれば従業員である個人が実際に「副業」を行っている割合はわずか9.3%にとどまっています。
過去にしたことがあると回答した割合が9.5%あるとはいえ、約80%の人が「副業」をしたことがないという結果になっています。

実際に副業を行っている詳細を見ると、本業の年収別では1,500万円以上から副業を行っている割合が急激に高まっており、職位別にみると部長相当以上で副業を行っている割合が最も高いことから、本業における業務裁量が高く、スキルを持っている人が多いと推察されます。

あくまでも推測の域を出ないお話にはなりますが、実際には副業をしたいと考えている人の割合はそれなりにいるものの本業での役職や裁量、企業側からの抑止などもあり10%程度の割合にとどまっているのではないかと思います。

実際にエン・ジャパンの「仕事のかけもち・Wワーク・副業 実態調査2021」では、仕事のかけもち・Wワーク・副業に興味はありますか?という質問に対して、90%の人が「興味がある」と回答していますので「副業をやりたいけど、できていない」という部分がまだまだ大きいのではないでしょうか。


前置きが少し長くなりましたが、これらの現状を踏まえたうえで労務管理上の視点から「副業」について見ていきましょう。

副業の位置付け

これだけ世の中に「副業」という選択肢が増えている中で「法律との関係性はよくわかっていない」という方も多いと思いますので触れておきますが、公務員を除く民間企業に勤務する従業員について、労働基準法や労働契約法で従業員の副業を禁止・制限する規定は存在しておりません。

このような記載をすると「えっ?!うちの会社では原則禁止って言われているけど・・・」などのお声が出て「法律では禁止・制限が無いのに、会社ルールではNGとできるの?」となると思います。

実際、全面的に「副業」を許容している会社以外では、就業規則などをよく見ると「会社の許可なく他の事業者の役員等に就任し、または従業員として労働契約を結び、営利を目的とする業務を行ってはならない」というような記載がされているのではないでしょうか。

現実的な面から言えば、就業規則などで「禁止・許可制」とされている中、実際にこっそり「副業」していたらすべてアウトになるのかというとそういうものでもありませんが、やはり先に述べたとおり会社としては本業に専念してほしいという側面もあるため、法律と完全一致はしないものの、ルールに盛り込んで一定の抑止をしていると考えます。

極端な話ですが、9~18時の就業時間中に抜け出してコンビニでバイトをしているなどそういうものは、指揮命令や職務専念義務に反するのでもちろんNGです。

ただし、従業員が労働時間以外の時間(例:休日など)に「副業」をすることは、原則として本人の自由に委ねられるべきという原則があります。昔、学校で習った記憶があると思いますが、憲法22条第1項にある「職業選択の自由」で保障されているためです。

少し大袈裟にはなりますが、この憲法をもとに考えていくと、たとえ会社が禁止していても、企業秩序維持や適切な労務提供に支障がなければ原則副業OKという解に至ります。
繰り返しますが、あくまでも本業の労働に支障がないなどを前提としたうえでのお話となりますのでご注意ください。

なお、この解がどういう経緯で成立しているか、少し古いモノもありますが、過去の判例事案をもとに少し見ていきたいと思います。

副業可否の考え方(過去の判例事案まとめ)


(1)事務職の従業員が、就業時間後18時~24時まで毎日キャバレーで仕事をしていた事案
→ 毎日の勤務時間は6時間、かつ、深夜に及び労務の誠実な提供に何らかの支障をきたす蓋然性が高いとして、普通解雇を有効とした。
(小川建設事件 東京地裁 昭和57.11.19 労反397号)



(2)タクシー会社の運転手である従業員が、会社の許可なしにガス器具販売等をしていた事案
→  生計維持に不可欠な規模に達しており、労務に従事することにより心身の休養時間が少なくなるのみならず、経営上の悩みや心労を伴い、事故防止というタクシー会社に課せられた使命感が危うくなるとして懲戒解雇を有効とした。
(辰巳タクシー事件 仙台地裁 平元.2.16判決 判夕696号)



(3)トラック運転手の従業員(週5日 勤務13時~24時頃)が、他のアルバイト就労の申請をすべて不許可にされ損害賠償を求めた事案
 → 業務開始直前までの労働や業務終了後の連続した労働の部分は不許可とされた。
   ただし、休日での3-4時間程度の労働部分は、業務支障がないことから許可されている。
(マンナ運輸事件 京都地裁 平24.7.13判決 労判1058号)


あくまでも過去の一部の事例にはなりますが、仮に争うことになった場合の判断基準としては、「副業」を行っている日(労働日or休日)、時間数、時間帯、業務影響、疲労度、業種などを勘案して、労務提供に支障をきたしているか否かが論点になっているようです。

また「副業」をすることによる疲労度や業務支障が一見ない場合でも、世間的な信用や体面を侵害するような職種の場合は、会社として禁止にするなど厳しい判断をせざるを得ないことになるでしょう。


「副業」の禁止・制限・中止ができる場合の具体例は下記のようにまとめられます。

  1. 労働者の働き過ぎによる人命または健康を害するおそれがある場合
  2. 副業が不正な競業に該当する場合
  3. 副業の態様が使用者(会社)の社会的信用等を傷つける場合
  4. 営業秘密の不正な使用・開示・漏洩などを伴う場合
  5. 労務提供に格別の支障を生じさせる程度の長時間労働が生じる場合

なお、よく質問などにあがってくるものとして、個人で行う株式投資、アフィリエイト収入目的のブログ、不動産投資などがありますが、原則として個人の自由となりますので、会社側から強制力を持って禁止や中止を求めることはできません。
ただし、本業の労務提供に明らかに支障が出ているケースや業務時間中にこれらの行為を行うなどの場合には制限、中止を求めることなどは可能となります。

副業の運用方法について

上記のように会社に無断で行っていて、結果的に何らかの事情で副業が発覚するケースもありますが、会社として現実的に副業を認めていく場合には、事前に許可申請などをさせて概要を把握しておくほうが賢明だと思います。

副業を許容する対象者にもよりますが、一般的には下記の事項などについては、会社側も把握しておくほうがトラブルを未然に防ぐことにもなり、また副業での疲労や本業(会社)とのバランスも確認することができます。

【想定される確認事項】
・副業先
・業務内容/業種
・雇用形態(雇用契約・業務委託・法人間契約)
・想定稼働時間(週・月)
・想定期間
・想定収入
・業務との関連性

この内容以外にも情報漏洩になりえないか、同業他社での勤務、競業避止義務違反に該当しないかなどを確認し、最終的には副業に関する誓約書なども併せて回収しておくと実務的には進めやすいでしょう。

許可申請書も一度きりではなく、半年や1年ごとに再提出をする運用により管理していくことで気付かないうちに本業(会社)よりも多くの時間を費やしていたなどが起きない仕組みも必要だと思います。
あくまでも本人から会社への許可申請とするため、内容等によっては認めないという選択も取れることになります。

ここでは、深堀りしていきませんが、副業における雇用形態などについても注意が必要です。
個人事業主としての業務委託や自身で法人を設立して対応する場合、あまり問題はおきませんが、副業先でもいわゆる「従業員」として雇用契約を締結する場合は、双方での労働時間管理や保険関係などもかかわってくるため確認が必要です。

副業を許可するのも、柔軟な考え方の一つ


従来の働き方が日々変化してきており、通勤時間やリモートワークもコロナを機に見直しがされています。まだ副業については、会社や職種によって導入の是非があるのも事実ですが、1つの在り方として今後確立していくものと思います。

どうしても管理する会社側としては、ネガティブな面を考えてしまうこともあると思いますが、適切なルールを定め運用管理をすることで、外部での学びや経験を自社に還元できる可能性もあります。

最低限の情報や労働時間の管理などは必要になりますが、いい人材を確保することが中々難しくなっているこのご時世ですので、上手に従業員のキャリアを形成できる環境を整備することで離職率の低下や優秀な人材の確保に繋がることもあります。

会社としても業務と関係のない副業を野放しに認めるまでは行かなくても、一定の制限をかけたうえで許可するなど柔軟な働き方を考える1つの機会にしていただけますと幸いです。


もしも…

  • 副業を希望している社員が増えているが、初めて副業のルールや労務管理用の書類を作らないといけない段階である
  • 副業はしても良いと考えているが、中には本業に集中してもらいたい事情がある従業員もいて考えどころはある
  • いろいろ社内で調査すると副業してそうな従業員がいそうなのは分かったが、話の切り出し方が分からない
  • 副業OKではあるが、本業と似ている業務もあり、許可するかどうか判断に迷いが出ている

などのお悩みがある方は相談窓口があるので、お気軽にご利用ください。

  社労士相談お問い合わせフォーム HRhacker


RYOTA
RYOTA

現役の上場企業人事/社会保険労務士 企業内・外の視点を持ち合わせ、労務管理を常に会社目線で考え最適解を導き出し、労働法令を超攻撃的に使うことを得意とする。 「上場企業人事×社会保険労務士×IPO経験者×特例子会社代表取締役×リストラコンサルタント」という5つの顔を持ちながら、 株式会社Scrap&Buildの代表取締役も務め、執筆の他、企業顧問、研修講師、IPOコンサル、リストラなど最前線で活動中。


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