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現役、社会保険労務士が教える「退職願」「退職届」「辞表」違いとは

こんにちは、現役上場企業人事/社会保険労務士のりょうたです。
この前、はじめてインビジョン株式会社にお邪魔しました。そのときに「助太刀屋」を任命されました。今回から現役上場企業人事/社会保険労務士+「助太刀屋」のりょうたでおねがいします。

話は戻ります。

新型コロナウイルスを機に、働き方だけでなく各企業の採用手法も大きく変わりつつありますね。

最近よく耳にする「ジョブ型雇用」や「DX推進」なども、以前から少なからず認識はされていたにせよ、見方によればコロナを契機に、より顕在化したものの1つではないでしょうか。


新卒・中途含めて各企業では毎年採用活動をされていると思いますが、多くの企業では人の「入社」(採用)がある一方で、人の「退社」(退職)も少なからずあると思います。


実務者としては、もちろん「入社」という入り口部分も企業活動を行う上で非常に重要なのですが、「退社」(退職)という出口部分も注意し、管理しておく必要があると感じますし、人の退社については意外と正確な知識をお持ちになっていない方もいらっしゃいます。


そのため、今回は「退職」というものについて、よくあるドラマのワンシーンに出てくる「辞表」や「退職願」を題材にしながら労務管理の側面から見て行きたいと思います。

目次[非表示]

  1. 1.退職あるある
  2. 2.「退職願」「退職届」「辞表」の違いとは
    1. 2.1.退職事由(退職の種類)
    2. 2.2.任意退職
    3. 2.3.合意退職
    4. 2.4.解雇
    5. 2.5.契約終了
  3. 3.「退職届」「辞表」
    1. 3.1.「退職願」
    2. 3.2.「早期退職制度」「希望退職制度」
  4. 4.さいごに
  5. 5.おまけ

退職あるある


本題に入る前に少し人事目線で実務面における「退職あるある」に触れておきたいと思いますが・・


そもそも皆さまの会社では・・・


「退職時、適切に退職者から書面を回収していますか?」

「有給休暇の消化など双方で話し合い、業務に支障がないように退職日が設定されていますか?」


「そんなことは当然だ!」と言えるくらい適切に対応されている場合は、何ら問題ないですが、よく色々な企業の運用を見ていると「退職時に書面を回収していない」「口頭だけで退職できることになっている」「退職日は最終的に会社が決めることになっていて、結局3ヶ月後にしか退職を認めてもらえなかった」など労使双方で「それってかなりマズイのでは?」みたいな事態が見受けられます。


情報化社会になっているとはいえ、会社・従業員でまだまだ情報弱者であるケースもあるせいか、言われるままになっているような運用は、後々トラブルに発展するケースもありますので、後述する内容と併せて「退職」についての理解を深めていきましょう。



「退職願」「退職届」「辞表」の違いとは

よくTVドラマで刑事モノを見ていると、主人公が「辞表」や「退職願」などをスーツのポケットに忍び込ませておき、いきなり上司に渡した後、一大決心をして現場に向かうとか、ちょっと危険な行動を取るシーンとかってありませんか?!


そして、だいたい一件落着でホッと一息した後に、ちょっと強面だけど実は優しそうな上司が出てきて「預かっていたこれはもう必要ないよな?」とか言って、ビリビリに破って笑顔で終了。みたいな映像を一度くらいは見た事あると思います。


そのワンシーンで主人公がポケットから取り出している「辞表」や「退職願」について、「表記の問題だけで内容は大して変わらないものでしょ」なんて思っている方いらっしゃいませんか?


日々の会社生活の中ではほとんど意識しない部類に入りますが「辞表」「退職届」と「退職願」は、法的な性質としても明確に異なっています。


「どっちにしたって、退職の意思表示になるわけだし、細かいこと言わないでもいいじゃない」と個人的には思う部分もかなりあるのですが、厳密に申し上げるとちょっと意味合いが異なりますので「退職」というものを事由(種類)ごとに分解しながら、さらに進めていきたいと思います。

退職事由(退職の種類)

多くの企業で特別な休暇を給与が発生する前提(有給)で設計するため、本来あるべき労働力(労

会社生活をする上で誰にでも必ず訪れる「退職」(会社と労働者の雇用契約が解消され、労働契約関係が終了すること)について、各事由に沿って整理しておきたいと思います。(下表参照)


任意退職

労働者が転職などを機に自らの意思によって離職することを指し、一般的には「自己都合退職」「辞職」などと言われるものです。よく誤解をされている方が多いのですが、労働者の自発的な退職については、労働基準法上の規制はありません。期間の定めのない契約をしている労働者(いわゆる正社員)は、14日前に申し出て、いつでも退職することができるものとなっています。(民法627条1項)

就業規則などに「退職の申し出は●ヶ月以上前に行う」「後任への引継ぎ等を完了させる」など記載しておくこと自体問題はありませんが、強要はできず訓示的な効果にとどまるものとなります。

ごく稀なケースではありますが「2週間前に辞めるっていえばそのまま辞められるから大丈夫!」のような発言をされている方をお見掛けすることがあります。この発言は上記の民法について理解した上でのものと推察いたしますが、実務者(会社)側からすれば、民法に定めがあるからといって、14日前に突然退職します。と言われると非常に困りますし、引継ぎやお取引先への連絡など周囲に多大な迷惑をかけることになります。

法律では認められているからOKというものではなく、やはりどの世界でも最低限のマナーを持って「立つ鳥跡を濁さず」としておくことがスマートだと思います。


合意退職

労働者と会社(使用者)が双方の合意によって労働契約を将来に向けて解約することです。具体的には会社側からの退職勧奨や会社が制度として設けた早期退職制度へ応募して退職する場合などが該当します。

 「合意退職」は、会社と労働者の合意を要件とすることが「任意退職」と大きく異なる点となります。実務では、その合意の効力について事後トラブルになるケースも多いので、運用をする際は慎重に検討の上進めることが望ましいです。

解雇

 会社(使用者)から労働契約を一方的に解約することです。一般的には、労務提供不能や勤務成績不良などによる「普通解雇」、重大な規律違反や悪質的な行為に対する「懲戒解雇」、その他倒産回避など経営上の必要性に基づく「整理解雇」などがあげられます。

通常の勤務をしている中では、あまり発生しえない「解雇」ですが、実際には相当厳しく制限されている制度です。法的にも客観的に合理的な理由を求められているため、この内容についてトラブルや裁判に発展するケースが過去を見ても多くあります。

実際に解雇を行う際には、対象者の行為や言動、その他客観的な事実等を確認したうえで慎重に進めていく必要があります。


契約終了

 会社(使用者)、労働者の意思表示にかかわらず就業規則等の定めに基づいて自動的に退職となるケースです。具体的には、定年による退職や休職期間の満了、その他有期契約労働者について契約期間が満了したことによるものなどがあげられます。

定年退職による契約終了は1つのルールとして自然に受入れられやすいものですが、休職期間後に復帰できずに退職(自然退職)する場合や有期契約者が契約更新されないこと(雇い止め)によるものは、その状況によってはトラブルを引き起こす可能性はあります。

特に、休職時の対応が杜撰であったり、契約書を締結せずに有期契約者と長い間雇用契約を締結していたような状態であったりする場合にトラブルとなるケースが多いため、そのような該当者がいる場合には契約実態の見直しをお勧め致します。

「退職届」「辞表」

「退職」について簡単な整理をしたうえで改めて説明をいたしますが「退職届」「辞表」は「◎月◎日をもって退職いたします」という労働者から会社に対する労働契約を解除する一方的な意思表示となるため「任意退職」に該当します。

ドラマの世界はさておき、現実世界において「退職届」は、労働者の一方的な意思表示によって効力が発生するものとなるため、会社(使用者)にその意思表示が到達した時点以降、撤回ができないものとなっています。(民法540条1・2項)

間違っても刑事ドラマのように後で上司が破ってくれるかも、慰留してくれるかも、などと甘い考えてを持って提出してしまい「あ、退職ですね、長い間お疲れ様でした」などとあっさり受け取られた場合は撤回できませんので、ご注意ください。

「退職願」

上記の「退職届」と名称はほとんど変わらない「退職願」についてですが、こちらは「◎月◎日をもって退職したく承認をお願いします」というもので、あくまでも労働者から会社に対して労働契約について「合意解約の申し入れ」となっているため、「合意退職」に該当します。

「退職願」を提出した時点では、「労働者からの退職申し込み」をしたにすぎず、会社(使用者)がこれに承諾するという行為が必要となります。そのため、会社の承諾の意思表示が労働者に達したときにはじめて成立するものとされているため、会社の承諾の意思表示が到達するまでの間は、これを撤回することができます。

また、この会社の承諾の意思表示は、就業規則等に特段の定めがない限り、単に所属長などが退職願を受理しただけでは足りず、人事権を持つ者(代表取締役や管掌役員、人事部長など)の受理によって成立されるものと解されています。

現実的なお話では社内システムの登録や人事を含めた各部門への退職についての情報が共有された時点で成立するイメージになると考えられます。


「早期退職制度」「希望退職制度」

 「合意退職」というフレーズがでてきたので、最近ニュースや新聞などでよく目にする制度にも触れておきたいと思います。

近年では大手企業や老舗メーカーなどであっても、経営の合理化や事業縮小などの観点から、会社が従業員に対して「早期退職制度」「希望退職制度」などを導入することも多々あり、これらは先述したとおり「合意退職」の一種になります。

これらの制度についての社内告知は、労働契約について「合意解約の誘引」となり、従業員が制度に応募することで「合意解約の申し込み」となり、最終的に会社が制度の適用を承諾し「合意解約の成立」となります。

「退職願」同様に従業員が制度に申し込みをした場合であっても、会社が制度の適用を承諾する前であれば従業員は撤回することが可能となります。

なお、雇用保険(失業給付)の取り扱いなどにかかわる最終的な「自己都合退職」か「会社都合退職」になるかについては、各制度を運用する会社にて決定・判断されるものですので、ご注意ください。


さいごに

「退職届」「退職願」の意味合いなど、退職事由とともに見てきましたが、ちょっとした思い込みや勘違いにより退職前後でトラブルに巻き込まれる可能性は少なからずあるものです。

 労働者側の理解不足でトラブルを招くこともありますので、会社としては適切な知識と運用方法を理解していただき、誠実な対応が求められます。


ひと昔前に比べて、日本も転職が当たり前の時代になってきており、どういう事態にも対応できるよう日頃から従業員の「採用」(入口)だけでなく「退職」(出口)についても学んでおく必要があると思いますので、これを機に社内の退職フローや手続方法、その他各種書面について一度見直しをされてみてはいかがでしょうか。


おまけ

先日、インビジョンにお邪魔した際の打ち合わせの1シーンです。

打ち合わせスペースは有楽町のガード下の焼き鳥屋イメージで、常連のお客さんにはボトルキープという噂もあります笑  通ってみようかな




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RYOTA
RYOTA

現役の上場企業人事/社会保険労務士 企業内・外の視点を持ち合わせ、労務管理を常に会社目線で考え最適解を導き出し、労働法令を超攻撃的に使うことを得意とする。 「上場企業人事×社会保険労務士×IPO経験者×特例子会社代表取締役×リストラコンサルタント」という5つの顔を持ちながら、 株式会社Scrap&Buildの代表取締役も務め、執筆の他、企業顧問、研修講師、IPOコンサル、リストラなど最前線で活動中。


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